リモートワークが定着してきたことで、働き方だけでなく、企業の福利厚生のあり方も変化の兆しが見えてきました。出社を必須としない分、オフィス維持にかかる費用や社員の交通費が浮いているケースが多いでしょう。これを、リモートワークを効果的、健康的、かつ快適に行い、パフォーマンスを最大化させるための福利厚生サービスに充てている企業もあるようです。今回は、そんなリモートワーク時代の福利厚生のカタチをご紹介します。
リモートワーク環境の整備をサポート
「アフターコロナにおける企業の働き方実態調査2022年版」によると、テレワークを実施している人の不満内容で1位となったのは「通信環境が不安定で仕事しづらい(35.5%)」(※1)でした。同社が前年に行った同じ調査では「やりがいを感じづらい」「孤独を感じる」など精神的な内容が上位を占めていましたが、リモートワークが定着してきたことで、できるだけ出社時と同じ環境で働きたいというニーズに変化していることがわかります。
この流れを受け、オフィス同様に快適に働ける通信環境となるようなリモートワークサポートサービスが増えてきました。その一部をご紹介します。
通信環境の整備に取り組んでいる事例
■「一歩先の働き方支援制度」Chatwork株式会社(※2)
Chatwork株式会社では、働く環境づくりの支援として、PC周辺機器や在宅勤務のためのグッズ費用について、一部を会社が補助する制度が設けられています。補助金額は1製品につき購入金額の50%。上限5万円、年間上限額15万円が会社から支給されます。
デスク環境の整備に取り組んでいる事例
■リモートHQ(株式会社HQ)(※3)
「リモートHQ」はリモートワークの環境整備に特化した福利厚生サービスです。パソコンデスクやチェア、モニター、ウェブカメラといったリモートワークに必須の備品類から、フィットネス機器やリフレッシュ家電に至るまで、1,000点以上のアイテムがレンタル可能です。
食事やリフレッシュタイムの支援も
リモートワークが続くと、どうしても食事が適当になりがち。休憩時間内に自炊をするのも面倒で、ついつい即席麺や冷凍食品になったり、「ながら食べ」でオンオフの区別が付きづらくなったりすることも。そんな状況に、食事やティータイムでのサポートが広がってきています。
■オフィスおかん仕送り便(※4)
置き型社食の「オフィスおかん」は、コロナ禍以前より食の福利厚生サービスとして注目されていました。昨今のリモートワークの広がりを受け、これを従業員の自宅に展開。仕事と私生活の両立の支援を銘打ってリリースされた「オフィスおかん仕送り便」は、一食分の食べきりサイズの真空包装のお惣菜が従業員の自宅に届けられるサービスです。メニューはすべて管理栄養士が監修。さばの味噌煮、ハンバーグ、肉じゃが、かぼちゃ煮など、旬の物や地の物を使ったお惣菜が人気です。
■チケットレストラン(※5)
「チケットレストラン」は、全国66,000店以上のコンビニや提携レストラン、カフェで利用できる食事補助サービス。導入企業は2,000社以上で、従業員の利用率は99%という人気の福利厚生サービスです。
■WORC(ワーク)(※6)
「WORC」は、スペシャルティコーヒーがオフィスや社員の自宅に届くサービスです。オフィスにあったウォーターサーバーやコーヒーマシンの代わりに、自宅で美味しいコーヒーを飲むことができます。気分転換やオンオフの切り替えになる粋なサービスです。
メンタルヘルスサポートやコミュニケーション支援も拡充
リモートワークが長く続くと、コミュニケーションの希薄化や、仕事とプライベートの切り替えの難しさなどから、メンタルヘルスに影響があることも多いようです。厚生労働省も「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」(2022年3月)を公表し、具体的な事例の紹介や対策のポイントを紹介しています。(※7)
このような状況の中、メンタルヘルスサポートやコミュニケーション支援を福利厚生に取り入れる企業も増えているようです。以下に企業事例をご紹介します。
■オンラインメンタルケア「first call」株式会社メディプラネット(※8)
「first call」は、リモートワーク下の従業員のメンタル状況の確認から従業員の健康ケアまで、WEBやアプリで実施することができるサービスです。従業員はスマホから匿名で24時間いつでも匿名で専門医に相談することができ、人事担当者はシステム上から登録者数や相談件数等の利用状況をリアルタイムで把握することができます。必要があれば、医師がオンラインで面談することも可能。従業員の健康診断やストレスチェック、勤務時間、健康管理データはシステム上で一元管理され、人事担当者の業務負荷も削減できます。
■ハコシェフ(株式会社Cqree)(※9)
2021年にリリースした「ハコシェフ」は、コロナ禍でのオンライン飲み会やランチ会、取引先との打ち合わせなど、コロナ禍でのコミュニケーションを盛り上げてきました。そのサービス内容はユーザーのニーズを汲みながら拡大し、オンライン内定式や入社式、さらには、参加者の自宅まで料理と飲み物を配送し、オンライン飲み会のお膳立てまで行っています。トヨタやパナソニック、電通、ドコモなど、多くの大手企業も福利厚生の一環として利用しています。
福利厚生のアップデートでエンゲージメント向上を
リモートワーク、ハイブリッドワーク時代の福利厚生のカタチをご紹介してきました。福利厚生とは、給与や賞与といった基本的な労働対価に加えて、従業員とその家族に提供する報酬を意味します。その福利厚生も、働き方の変化に合わせて進化するべきではないでしょうか。 働き方の選択肢が増えるなら、福利厚生の内容や幅も柔軟に対応していく方が自然かもしれませんね。働き方に合わせて、自分や家族に最適な福利厚生を選べれば、従業員のエンゲージメントも高まり、企業の生産性も向上するでしょう。
そしてまた、従業員のニーズを汲んだユニークな福利厚生は、広報・ブランディングにも効果が出るでしょう。今後も働き方の選択肢が広がるとともにさまざまなサービスが追随し、働きやすい世の中に向かうことに期待したいと思います。
出典
- ※7
- テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き/厚生労働省
- ※8
- first call/株式会社メディプラネット
- ※9
- ハコシェフ/株式会社Cqree
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