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ARによる遠隔作業支援とは|メリットと導入の注意点、活用できる補助金を紹介

ARによる遠隔作業支援とは|メリットと導入の注意点、活用できる補助金を紹介

ARを用いた遠隔作業支援は、人材育成の効率化や人員コストの最適化につながります。適切に運用できると、業務効率や生産性の向上による売上アップをもたらす好循環を生み出せるでしょう。

さまざまな業種で実践されている事例を参考にすると、ARによる遠隔作業支援の導入イメージがより明確化されるはずです。

本記事では、ARによる遠隔作業支援を活用しやすい業種と導入後のイメージ、メリット・注意点を解説します。導入事例も紹介するので、遠隔作業支援の導入を検討されている方は参考にしてください。

ARによる遠隔作業支援とは

ARによる遠隔作業支援とは、ARデバイスを用いてリアルタイムに作業を支援することや、そのためのシステムです。

ARによる遠隔作業支援は、視点を共有するだけではなく、共有した映像にテキストや画像、3Dコンテンツなどのデジタル情報を付加できます。たとえば、若手作業員の作業視点を見ながら修正箇所を矢印マークで指し示す、3D化した模型を動かしながら説明するといった使い方が可能です。

スマートグラスやヘッドマウントディスプレイは、両手が空いた状態で使用できるため、両手を使う作業の支援に適しています。スマートフォンやタブレットは、手がふさがるため作業支援には向きませんが、検査・管理業務の支援に活用可能です。

ARは、メールや電話と異なり視覚的にアプローチできるため、遠隔地にいながらも、まるで隣にいるかのようにリアルタイムで作業支援を行えます。

ARによる遠隔作業支援を活用しやすい業種と活用イメージ

ARによる遠隔作業支援を活用しやすい業種ごとに、どのように活用できるかの具体的なイメージを以下にまとめました。

業種活用イメージ期待できる効果
電力・ガス・水道施設の保守・点検作業において、ARデバイスを通じてリアルタイムに作業者の様子を監視、適宜指示を出す・熟練者の現場への移動時間を削減できる
・1対複数人のレクチャーができる
製造作業者がARデバイスを装着して作業し、管理・作業の指導を効率化できる
物流者が遠隔地から指示やアドバイスを行う・ミスを削減できる
・品質向上につながる
物流ピッキング作業に必要な情報をディスプレイに表示しながら作業し、管理者から適宜指示やアドバイスをもらう・ピッキングミスを削減できる
・はじめて作業する従業員も迷わず作業できる
建設作業段階や材料確認など発注者の立会が必要な確認業務を、ARデバイスを通して遠隔地から行う・発注者の移動時間を削減できる
・次工程に移るまでの時間を短縮できる
医療遠隔地にいる熟練医師が、モーションセンサーを搭載したARデバイスを通じて手の動きを共有し、手術に必要な技術を指導する・技術伝承を効率化できる
・医療機関間の連携がスムーズになる

活用イメージからわかるとおり、ARによる遠隔作業支援は、管理者が管理業務に集中できる環境を構築できます。現場に行かずに済むため、複数人の作業者を支援できることも特徴です。人手不足で効果的な人材教育が求められる業種で、効果的に活用できるでしょう。

作業者と管理者だけではなく、発注者と受注者の間に生じる業務の円滑化にも役立ちます。電話やメールとは違い、視覚情報を盛り込みながらリアルタイムに遠隔コミュニケーションを行えるため、技術習得や意思決定までの時間を短縮できるでしょう。

ARによる遠隔作業支援のメリット

ARによる遠隔作業支援のメリットは、次のとおりです。

・作業効率を高められる

・作業品質を均一化できる

・効率的に人材育成ができる

・ノウハウを蓄積できる

・人件費や関連コストを最適化できる

・緊急時にも対応できる

メリットを活かした形でARを導入できると、効果をより実感できるはずです。6つのメリットをどのように活かすか、考えながらお読みください。

作業効率を高められる

ARによる遠隔作業支援によって、現場にいる作業員と指導・管理にあたる熟練者それぞれの作業効率を高められます。

従来は、電話やメールなどを使用して文字や音声で熟練者の指示を仰いでいたため、理解するまでに時間がかかったり、何度もやりとりが発生したりと、スムーズにいかないことが多くありました。

作業をしながらリアルタイムに視覚的な指示を仰げるAR遠隔作業支援であれば、スムーズに理解できるため、作業スピードの向上が期待できます。熟練者は、指導のために現場に行く必要がなくなり、移動時間を削減できます。遠隔地から複数の作業員を指導できるため、指導効率も向上するでしょう。

作業者や指導者、管理者それぞれの作業が効率化することで、会社全体の生産性アップにもつながります。

作業品質を均一化できる

ARによる遠隔作業支援では、現場の作業品質をリアルタイムに管理者がチェックし、指導できるため、作業の品質を均一化できます。

従来の電話やメールによる指示では、現場と管理者の間で認識がずれた場合、ミスが発生したり品質にムラができたりするおそれがありました。ARはリアルタイムで視覚的な支援が可能なため、コミュニケーションミスによるエラーの発生を予防できます。

効率的に人材育成ができる

ARによる遠隔作業支援は、人材育成を効率化できます。

一斉授業型の研修では、一人ひとりの練度を確認しながらの個別指導が難しいという課題があります。一方ARは、作業の視覚的な支援によって、各作業者のクセを見極めたうえで的確な指導が可能です。その結果、従来よりも若手作業者の理解スピードが向上し、人材育成の効率化を図れます。

高齢化が進んでいる熟練者の負担軽減にもつながるでしょう。

ノウハウを蓄積できる

モーションセンサーを搭載したARデバイスは、熟練者の動きをトレースしたうえで、動的なマニュアルを作成できます。マニュアル化によって、伝承が難しかった技術や、身につけるのに時間がかかっていたノウハウを蓄積可能です。

この技術は、作業者の遠隔作業支援にも役立ちます。仮想現実上で熟練者の動きをトレースした3Dコンテンツを操作し、向きを変えたり細部を確認したりすることが可能です。動画ではわかりにくい細部の動きを何度もチェックできるメリットがあります。

熟練者のノウハウを蓄積し、若手作業員の育成を効率化できると、生産性の向上も期待できます。

人件費や関連コストを最適化できる

ARによる遠隔作業支援が人材育成を効率化できると、若手作業員が従来よりも早い段階でひとり立ちし、必要最小限の人数で作業を進められるようになります。また、熟練者が一度に複数の若手作業員に指導できる体制は、人材育成にかかるコストを削減します。

その結果、作業品質や生産性の向上とともに、人件費の最適化につながるでしょう。

緊急時にも対応できる

ARによる遠隔作業支援を導入すると、現場で緊急の対応が必要なトラブルが発生した際、熟練者や管理者の指示をリアルタイムに仰げるようになります。

従来は、熟練者や管理者が直接現場に行って対応しなければならないケースがありました。電話やメールによる指示は伝わりにくく、何度もやり取りが発生して時間がかかってしまいます。

ARによる遠隔作業支援は、トラブル発生後すぐに的確な指示を受けられるため、従来よりもスピーディーな対応が可能です。

ARによる遠隔作業支援の導入事例

ARによる遠隔作業支援の導入事例を5つ紹介します。

・事例1.運航中の問題解決を支援|造船業

・事例2.ポンプ場の現場作業者への後方支援|河川管理業

・事例3.手順書の作成と現場を支援|点検・検査業務

・事例4.遠隔臨場の効率化|建設業

・事例5.遠隔支援による手術を実施|医療分野

自社にARを導入する際の参考にしてください。

事例1.運航中の問題解決を支援|造船業

フィンランドを本拠とするWärtsilä(バルチラ)は、ARグラスを通じて海上と陸上をつなぎ、専門家のサポートを受けられる仕組みを構築しました。

修理の専門家が現場に常駐しているわけではないため、大型船の運航中にトラブルが起こった際は、現場での対応が求められます。ARグラスを活用すれば、遠隔地にいるメンテナンスユニットの専門家のサポートを受けながら、エンジニアが対処にあたることが可能です。

参考:Wärtsilä successfully tests remote guidance service capabilities|Wärtsilä Corporation

事例2.ポンプ場の現場作業者への後方支援|河川管理業

株式会社日立インダストリアルプロダクツ機械システム事業部 ポンプ・送風機システム本部は、維持管理・更新費用が増加している河川管理業業務の効率化を目的として、ARを活用したシステムを開発しました。

本システムは、携帯型ARデバイスの使用によって、作業ガイダンスやARによる無線センサ計測値を表示しながら、点検作業を行えます。現場映像は遠隔地にいる管理者に共有されるため、テキストやチャット、マーキングで指示が可能です。また、現場で必要となった図面や資料をARデバイスに送信でき、点検作業と管理業務を同時に効率化できます。

参考:AR(拡張現実)を使用した点検作業ナビゲーション技術「現場作業支援システム(e-ポンプメンテ)」|株式会社日立インダストリアルプロダクツ機械システム事業部 ポンプ・送風機システム本部

事例3.手順書の作成と現場支援|点検・検査業務

株式会社NTTデータは、アメリカScope AR社が提供する『WorkLink』を活用し、ARによる作業支援サービスを構築しました。

WorkLinkは、ARによって3Dの手順書を作成し、直感的な作業を可能にします。遠隔地の熟練者とつなげることで、作業支援を受けられる仕組みです。AIの力で手順書の自動作成も可能なため、紙による手順書を作成する際の手間と時間がかかりません。わかりやすい手順書と的確な支援によって、効率的な人材育成を実現できます。

参考:AR技術を活用した3Dマニュアルによる現場作業支援サービスを開始|株式会社NTTデータ

事例4.遠隔臨場の効率化|建設業

日本システムウエア株式会社と株式会社竹中工務店は、ARグラスを活用して、建設現場での遠隔臨場を効率化する仕組みを構築し、実証実験を行いました。

国土交通省によると、遠隔臨場は次の行為を意味します。

遠隔臨場とは、動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)によって取得した映像及び音声を利用し、遠隔地からWeb会議システム等を介して「段階確認」、「材料確認」と「立会」を行うことをいう。

引用:建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)|国土交通省 大臣官房技術調査課

従来、臨場は複数の担当者が現場に足を運んで行っていましたが、人手不足や長時間労働などの課題を解消する目的で、Web会議ツールを使用する遠隔臨場が推進されていました。遠隔臨場は、従来よりも効率的であるものの、画像や動画の共有に時間がかかる、口頭による説明がわかりにくいといった課題も明らかになったのです。

本事例では、ARグラスとWeb会議ツールの併用によって、現地作業者の視点をリアルタイムで共有することで生産性の向上を確認し、遠隔臨場の効率化に成功しました。

参考:企業調査レポート (NSW) 2021年12月1日|日本システムウエア株式会社

事例5.遠隔支援による手術を実施|医療分野

海外では、医療分野でのARの活用によって、遠隔地からの外科指導と共同手術を成功させています。

本事例では、遠隔地にいる外科医から合計20人の参加者が指導を受けました。その後、以下2つの条件のいずれかを選択し、手術を実行します。

1.ARを活用したテレメンタリングシステムを使用しながら実施する

2.個別で事前に手順を確認してから実施する

結果、ARを使用した参加者のほうが、加重個人パフォーマンスが10%高く、エラーが67%減少したのです。

この技術は、世界中で外科指導の遠隔支援を可能とし、医療分野の発展に貢献するでしょう。

参考:The System for Telementoring with Augmented Reality (STAR): A head-mounted display to improve surgical coaching and confidence in remote areas|ScienceDirect

以下の記事では、遠隔支援以外にもARの活用事例を紹介しているので、あわせてご覧ください。

【最新】ARの面白い活用事例15選!活用するメリット・デメリットも解説

ARによる遠隔作業支援を導入する際の注意点

ARによる遠隔作業支援を導入する際は、以下の2点に注意しましょう。

・導入時の研修が必要となる

・万全なセキュリティが必要となる

ARによる遠隔作業支援のメリットは、どれも機器を導入するだけで享受できるわけではなく、下準備が必要です。2つの注意点を参考に準備を整え、ARによる遠隔作業支援の効果的な運用を実現しましょう。

導入時の研修が必要となる

ARデバイスの導入後は、操作に慣れるための研修が必要です。ARデバイスを活用して遠隔支援を担う熟練者が高齢の場合は、慣れるまでに時間がかかったり負担となったりすることもあります。

作業者のストレスを抑えながら定着できるよう、段階を踏み、理解を得ながら導入を進めることが適切です。

スムーズな導入のためには、担当者がARデバイスと関連システムの使い方を理解しておくことも欠かせません。専門家の指導を受け、社内のプロフェッショナルになれるよう、研修プログラムの構築段階から参画するとよいでしょう。

万全なセキュリティが必要となる

ARデバイスや使用するネットワーク環境には、セキュリティリスクが伴います。安全に使用するためには、適切な対策を講じたうえで、ARを導入しなければなりません。そこで、開発会社や知見が深いサービス提供者に協力を仰ぎ、専門的な観点から必要な対策を検討しましょう。

以下の記事では、ARの活用において考慮すべきセキュリティリスクをまとめています。ARの導入を検討する際にご覧ください。

ARのセキュリティ・プライバシーのリスク|安全性を確保してARを導入しよう

ARによる遠隔作業支援に役立つSplashtop ARとは

スプラッシュトップ株式会社が提供する『Splashtop AR』は、スマートフォンやタブレットの映像を遠隔地のデバイスに共有し、視覚的な作業支援を行えるツールです。

線や矢印などのアテーションと呼ばれる視覚的なオブジェクトを共有された映像に配置し、リアルタイムで作業指示を出しながらの音声通話が可能です。

既存のデバイスにインストールするだけですぐに使えるため、手軽に導入できます。無料トライアルでお試しいただき、遠隔作業支援のイメージを膨らませてみてください。

無料トライアル

ARによる遠隔作業支援の導入に活用できる補助金・助成金

ARによる遠隔作業支援を導入するにあたって予算が課題となった場合は、補助金・助成金の活用を検討してみましょう。

ARグラスによる遠隔作業支援が労働時間の短縮・生産性の向上につながるとして、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」が認められたケースがあります。

助成率と上限額は以下のとおりです。

補助金・助成金働き方改革推進支援助成金
(労働時間短縮・年休促進支援コース)
助成率75%(一定要件の場合、80%)
上限額最大200万円(一定要件の場合、最大440万円)

ほかには、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に活用できる「IT導入補助金」があります。また、ARを含むXRコンテンツの開発やシステム導入を支援する福井県の「ふくいDX加速化補助金」のように、自治体が独自に提供するDX推進系の補助金を活用できる可能性もあるでしょう。

補助金・助成金制度は多数あるため、AR導入の前に調べることをおすすめします。

まとめ:ARによる遠隔作業支援を導入して業務効率を向上しよう

ARによる遠隔作業支援を導入すると、作業効率の向上や品質の均一化が期待できます。人手不足や高齢化による技術継承が課題となっている業種では、人材育成の効率化も可能です。

自社が活用したいイメージに近い事例を参考にすると、導入をスムーズに進められます。導入までに、社内にARが定着するよう使用者に段階的な研修を実施するほか、サイバー攻撃に備えて万全なセキュリティ体制の整備も進めましょう。

はじめてARを導入する際は、デバイスや環境構築にどうしてもコストがかかります。予算に都合がつかないときは、国や自治体が提供する補助金・助成金の活用も検討してみてください。

スプラッシュトップ株式会社が提供する『Splashtop AR』は、既存のスマートフォンやタブレット、パソコンにアプリをインストールするだけで使用できるARツールです。低コストで導入できるため、予算の都合で迷われている方もぜひ一度お問い合わせください。

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