リモートワークが当たり前の景色になりつつある中、次なる働き方のアップデートをもたらすのは、もしかしたらVRゴーグルかも……。そんな閃きで、VRゴーグルと格闘して新しい働き方に思いを馳せているのが、IoTでもっと自由にを推進するスプラッシュトップ株式会社のエンジニア・K氏。「Meta Quest Pro」が発売されるや否や、Splashtopと繋いでみたという「新しいものはすぐ試したい派」のK氏に、その取り組みや展望を聞きました。
スプラッシュトップ株式会社の中の人/エンジニア・K氏
スプラッシュトップ株式会社社長室本部所属のエンジニア。事業のいろんなところに首を突っ込むのが主な業務。弊社代表の水野とは10年来の付き合い、スプラッシュトップ株式会社への入社は2020年。リモートワークの傍ら、自宅でIoTを駆使してメダカを育てている。
(参考記事)https://iotremote.jp/article/article/iot-medaka-Tech.htmlVRとSplashtopの連携で、働き方はどう変わる?パソコンなしリモートも当たり前の風景に?
VRゴーグルとSplashtopを繋いでみたのはなぜ?
端的に言うと、新しいもの好きの弊社代表に「やってみろ」と言われたのがきっかけです。と言いつつ、「Meta Quest Pro」が発売されてから実は気になっていて、どんなものかひっそりと試してはいました。
Splashtopは、あらゆるところからリモートでアクセスできるというのが最大のウリですから、VRとの親和性は高いに決まっています。SplashtopがVRデバイスでどのように動作するのかを検証することで、サービスの可能性を広げられるのではないかと考えたから、まじめに答えるとこれが理由です。
VRゴーグルとSplashtopの連携で、どのような活用法が考えられる?
Splashtopでは、「SOS(Splashtop On-Demand Support)」や「SOS AR(※)」などの遠隔監視サービスを提供していますが、これがVRに対応できれば、現場の作業者のサポートがより効果的にできるようになると思います。
現状では、遠隔サポートは現場のネットワークに繋がったPCを遠隔操作することで様々な問題に対処しています。これにVRの機能を持たせるには、やはり同一ネットワークのPCにVRデバイスを繋ぐ必要があるのです、今はまだ……。
VRゴーグルの中でSplashtopクライアントを動作させるために、現在社内でも試行錯誤しています。近々なにかご報告できるかもしれません。
VRゴーグルの中でSplashtopクライアントが問題なく動作すれば、、カフェでのリモートワークの形式も変わるでしょうね。MacBookを持ち込んでの作業ではなく、PCも持たずにかっこいいVRゴーグルを装着しておしゃれに働いているかも……。キーボードもバーチャルですから、空中で指を動かしながら……。今想像したらちょっとおかしな光景ですが、それが当たり前になると、社会は変わります。専用のカフェができたり、「まだPCを持ち歩いてるの?」なんて世の中が来るかもしれないなと思っています。
このことは実は大きな意味があると思っていて、VRゴーグルとか遠隔サービスとか、専門的な分野で活用するだけでなく、汎用的で誰でも使える状態になるんですよね。限られた人のためのものでなく、働く普通の人も当たり前に使える。このことの方が重要ではないかと思います。
VRゴーグルのスペックもどんどん進化しています。Meta社を筆頭に、各メーカーは、人の脳波や指の微細な動きで発生する電気信号で、いかにUIをコントロールするかということを徹底的に研究しています。ちょっと指を動かす、ちょっと考えるだけで、操作が叶うようになっているんですね。これに、機器の軽量化や、ネットワーク環境などのインフラが整って行けば、誰でも、どんな場所からでも何かが動かせるようになります。障害があっても、職場から遠い地方でも、地球の裏側からでも、VRに繋ぐことができさえすれば、自由に働くことができます。遠隔、リモート、VRなどという難しい言葉に隠れがちですが、スプラッシュトップ株式会社のスローガンである「ぼくたちは、もっと自由になれる。」が目指している世界観そのものなのです。
※SOS AR:SOS ARは、他の技術者や管理職の専門家またはモバイルワーカーなどを支援することを目的に開発されました。問題(製品のセットアップ、ハードウェアの問題の解決など)に対処するために、現場のスタッフやクライアントを視覚的な補助で遠隔支援することができます。
アバター接客にリモートで調理も?実証実験も進行中VR技術の発展で変わっていく業界、事例は?
今どんどんVRが日常になっていくところなので、これから事例が集まってくると思います。最近話題になった事例で言えば、グリーンローソンのアバター接客(※1)があります。
20を超えるサステナブルな施策を集約した「グリーンローソン」がオープンした2022年の11月に導入されたのが「アバター接客」です。
「アバター接客」とは、離れた場所からオンラインでつながったスタッフが、カメラに映る来店客に対しアバターを通して接客するサービスです。アバター接客のスタッフ募集には、10代から60代まで約400人の応募がありました。なかには「『介護がある』などの理由から店舗勤務はできないが、オンラインで接客をしたい」という声もあったようです。
グリーンローソンの「アバター接客」にとどまらず、AR・VR・ロボットなど複数の技術を組み合わせれば、品出しや商品チェック・簡単な調理など、より能動的にさまざまな仕事ができるようになるでしょう。これらの技術があれば、ひとりが同時に複数店舗で勤務することも可能となり、コスト削減や人材不足の解消が期待できます。
技術の進展と実証実験の成果を踏まえた実装が広まっていけばスプラッシュトップ株式会社が目指す「みんなが無理なく自由に働く」世界はさらに実現に近づいていくでしょう。
リモートワークが進化するからこそ大切にしたいこと
VRゴーグルが加われば、Kさんの働き方も変わりそう?
私自身の働き方で言うと、今もリモートワークなのでそんなに変化はないかもしれませんね。都会を離れて働いてみたいという気持ちはありますが……。
ただ、VRやAR活用でリモートワークが進化することは間違いありません。だからこそ気をつけなければいけないこともあると思っています。
ひとつは、VRもARも、活用できればそれでいいというわけではないということ。VRの進化で、保育や医療、介護の現場への活用を期待する声もあります。しかし、万が一ネットワークが切れたとしたら、大変なことになります。命に関わるものなどへの活用は慎重に、信頼性や技術の担保が十分でないうちは参入は難しいのではないというのが弊社の見解であり、私個人としてもそう思います。技術は活用すること自体が目的ではないということを見失わなってはいけません。
もうひとつ、リモートが進化するからこそ、オフラインでの経験を大切にするべきだと思います。というわけで、新しい社内コミュニケーションの場としてゲーム部を始めることにしました。弊社はリモートワークも併用しているので、対面で会うことが少ないメンバーもたくさんいます。直接のコミュニケーションの価値や効果にも期待しています。
弊社はこのような機会を積極的に作っていますが、ポイントは強制力がないことと、公表してオープンに活動することです。オンラインがベースとなると、興味がある人同士で集まってコソコソと活動してしまい、組織が分断される恐れがあります。例えばゲーム部の活動は基本的にはオンラインですが、活動の様子をシェアしたり、オフラインで集まる機会を作ったりということに気を配っています。
また、最近の若者は強制されるのは嫌がります、私も嫌ですし(笑)。昭和とも平成とも違う、ネクストリモート時代の新しい社内コミュニケーションも、今後率先して作っていきたいと思っています。
編集後記
メダカの学校でおなじみのK氏が、社内会議で2回に渡って「Quest ProでSplashtop製品が動くか試してみた」を報告したことを機に行われた今回のインタビュー。もちろん、2回に渡って「動かず!」という結果だったのですが、「今はまだ、動かず!(でも、近日動く)」という明るい未来が想像できてしまった我々は、強引にK氏の思いを紡いでみることにしたのでした。
VRゴーグルの活用も、今後のリモートワークの進化も、「特別な人に対してだけでなく、みんなに」というスタンスが印象的でした。スタバや街中でVRゴーグルをつけて、PCなしに空中で手を動かしている風景。今は奇妙に思えても、当たり前になる日は意外と近いのかも。ゲーム部のその後も近日公開……?
参考
Quest ProでSplashtop Businessクライアントを動かすためのK氏の苦闘の記録
対象デバイス
Meta Quest Pro
対象アプリ
Splashtop Businessクライアント(STB)
必要なもの(PC側)
ADBドライバー
Side Quest
STBのインストールファイル(apk)
必要なもの(Quest Pro側)
Wolvic (Firefoxベースのサードパーティ製ブラウザ)
STBのインストール
PCにSide QuestとADBドライバーをインストール
Quest Proを開発者モードに変更
PCとQuest ProをUSBケーブルで接続し、Side Questを使ってQuest ProにSTB(apk)をインストール
STBの起動
Wolvicでmy.splashtop.comにログイン
接続対象のPCをクリックし、”アプリから接続”を選択
クライアントのログイン画面が表示されるので認証情報を入力してログイン
起動手順が複雑、マウスが未対応などまだまだ実用レベルではありませんが、Quest ProとSplashtop双方の対応が進めば、VRでのリモートワークも現実的になってくるかもしれません。
出典
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