ワーケーションは、観光地や帰省先のようないつもと異なる環境で、働きながら休暇を楽しむことを指します。テレワークが加速するなか、働き方改革の一環として注目されているワークスタイルです。
しかし、ワーケーションという言葉はなんとなく理解していても、具体的な内容や導入方法はよくわからないという企業も多いのではないでしょうか。デメリットはないのか、気になる方もいるはずです。
そこで本記事では、ワーケーションの定義やメリット・デメリット、成功させるためのポイントについて紹介します。ワーケーションを導入して従業員の満足度をアップさせたいと考えている方は、ぜひ最後まで記事をご覧ください。
ワーケーションの定義とブレジャー・テレワークとの違い
ワーケーションの定義や近年耳にするようになったブレジャー、加速するテレワークとの違いを解説します。
・ワーケーションとは仕事と休暇を組み合わせた働き方のこと
・ワーケーションとブレジャーの違いは行き先やプランの決め方
・ワーケーションとテレワークの違いは働く場所
それぞれの違いを理解して、目的に合った働き方をしましょう。
ワーケーションとは仕事と休暇を組み合わせた働き方のこと
ワーケーションは「Work(働く)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語です。つまり、自宅とは異なる場所で休暇を楽しみながら仕事をすることを指します。
ワーケーションには「休暇型」と「業務型」の2つのパターンがあり、業務型ワーケーションはさらに3つのタイプに分かれます。
休暇型 | 福利厚生型 | 休暇が主な目的で、観光地やリゾート地に長期滞在しながらテレワークを行う |
業務型: 仕事が主な目的で、観光地やリゾート地で仕事をしながらリフレッシュ効果も得られる | 地域課題解決型 | 地域の課題を解決する仕事をしながら休暇も楽しむ |
合宿型 | チームやプロジェクトのために観光地やリゾートに集まり、集中して作業する | |
サテライトオフィス型 | 地域ごとに設けられた小規模なオフィスでのリモートワークをする |
このように、休暇と仕事、どちらが主な目的かによりワーケーションのパターンが異なります。
しかし「観光地やリゾート地に長期滞在しながら仕事をして、リフレッシュ効果を得る」ことには変わりありません。
ワーケーションとブレジャーの違いは行き先やプランの決め方
ブレジャーとは「Business(仕事)」と「Leisure(余暇)」を組み合わせた造語です。ワーケーションと似ていますが、次のような違いがあります。
・ワーケーション:行き先やプランを自分で決めて、現地に滞在しながら仕事をする
・ブレジャー:出張に余暇を付け加えた方式で、行き先やプランは会社側から指示されているケースが多い
ワーケーションは休暇がメインであるのに対し、ブレジャーは出張(仕事)がメインであるのが特徴です。
ワーケーションとテレワークの違いは働く場所
ワーケーションとテレワークの違いは働く場所にあります。
・ワーケーション:休暇で宿泊中のホテルや旅館、帰省先などで期間を定めて仕事をする
・テレワーク:自宅やコワーキングスペースなど、生活範囲内の場所で仕事をする
テレワークの主な目的は、ワークライフバランスの実現や生産性の向上などです。対して、ワーケーションの目的は、休暇を取りやすくすることやリフレッシュすることにあります。
ワーケーションの3つのメリット
ワーケーションには3つのメリットがあります。
・メリット1.長期休暇が取りやすくなる
・メリット2.作業効率アップが期待できる
・メリット3.社員満足度の向上が期待できる
メリット1. 長期休暇が取りやすくなる
ワーケーションを導入することにより、長期休暇が取りやすくなります。なぜなら、ワーケーションでは休暇を楽しみながら通常の業務もこなすからです。
最低限の仕事は滞在先からできるため、フレキシブルな対応が可能となります。その結果、有給を取る社員の罪悪感も軽減され、長期休暇が取りやすくなるのです。
メリット2. 作業効率アップが期待できる
社員の作業効率アップが期待できることもメリットです。
ワーケーションは休暇を楽しみながら働くため、短時間で仕事に集中することになります。また、いつもと違った環境で仕事をすると、新たなアイデアが生まれやすくなるでしょう。
ワーケーションは社員自身が行き先やプランを決めるため、作業しやすい環境を自分で選べるようになることも作業効率アップにつながります。
メリット3. 社員満足度の向上が期待できる
ワーケーションを導入すると、社員満足度の向上も期待できるようになります。
ホテルや帰省先から仕事をするなど、社員の働き方の幅が広がります。休暇を楽しみながら適度に業務を行うことで、リフレッシュできるようになるのです。
社員満足度が向上すると、離職率の軽減や社員の生産性・創造性の向上にもつながります。
ワーケーションの3つのデメリット
ワーケーションには、メリットだけではなく、3つのデメリットも考えられます。
・デメリット1.仕事とプライベートの切り替えが難しい
・デメリット2.セキュリティリスクがある
・デメリット3.さまざまなコストが発生する
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
デメリット1. 仕事とプライベートの切り替えが難しい
ワーケーションは、仕事とプライベートが曖昧になり、気持ちの切り替えが難しいデメリットがあります。この境界が曖昧になると、仕事とプライベートのバランスが崩れて疲労やストレスがたまり、生産性の低下につながりかねません。
ワーケーションを効率良く行うためには、時間を区切ることや、作業スペースを明確に分けることが重要です。このような工夫をすることで、仕事とプライベートの切り替えがスムーズになり、健康的にワーケーションを実施できるようになるでしょう。
デメリット2. セキュリティリスクがある
ワーケーションを実施する際には、セキュリティリスクがあることも忘れてはなりません。
たとえば、公共のWi-Fiを利用すると、サイバー攻撃や情報漏洩などのリスクが伴います。そのため、ポケットWi-Fiを用意する、公共のWi-Fiのセキュリティチェックを行うなど、十分なセキュリティ対策が必要です。
また、滞在先のカフェやコワーキングスペースを活用するときは、盗難や画面を盗み見られるリスクも考慮し、対策を行いましょう。
デメリット3. さまざまなコストが発生する
ワーケーションにはさまざまなコストがかかります。一例として、次のような費用が考えられます。
・ワーケーション先への交通費
・滞在費
・食費・雑費
・休暇を楽しむための観光費
ワーケーションに大きな費用が発生することは、企業にとっても従業員にとっても頭の痛い問題となっています。従業員が行き先やプランを決めるため、これらの費用は従業員負担となるケースが多いのが現状です。
ワーケーションはどれだけの人が体験しているの?
スプラッシュトップ株式会社は2022年8月に、どれだけの人がワーケーションを体験しているのかのアンケートを実施しました。
結果について、詳しく解説します。
22.4%がワーケーションを経験
実際にどのくらいの人がワーケーションを行なっているのか、その人たちの属性などについて、同社が2022年8月に実施した『ワーケーションとテレワークに関する調査』をご紹介します。(※1)
新型コロナ感染拡大防止のための緊急事態宣言が出された2020年3月からテレワークが急速に広まり、制度に取り入れる企業も増加しました。それから2年以上経過し、ワーケーションという働き方がどのくらい浸透したのでしょうか。
調査結果によると、テレワークが実施可能な仕事で、ワーケーションを認知していると回答した会社員の22.4%が、ワーケーションを経験していたことがわかりました。また、ワーケーションを予定しているという人が11.5%いました。
2022年8月にワーケーションを体験した人が37.9%で、続いて2022年7月が36.6%でした。このデータから、夏休み時期の参加者が最も多いことがわかります。
3番目は、2022年5月のゴールデンウィーク期間中でした。
また、ワーケーションを経験した延べ人数は、2021年から2022年の1年間で約2.2倍増加しました。
ワーケーションに求める要素
ワーケーション先に求める環境を聞いたところ、以下の結果となりました。
・社員層、経営層ともに「高速で安定した通信環境」が1位。
・経営層の2位は、デスクなどの「仕事に快適にできる備品機材」(46.9%)、3位がコワーキングスペースなどの「仕事に便利な設備」(46.2%)
・社員層の2位は、コワーキングスペースなどの「仕事に便利な設備」(45.0%)、3位は音がなく「仕事に集中できる環境」(41.8%)
社員層、経営層ともに、「その場所ならでは体験」や「非日常感が味わえる環境」などのバケーション要素よりも、便利で快適な仕事環境を求めるという結果になりました。
今後、ワーケーション推奨施設を展開するのであれば、通信環境などインフラの最適化・仕事が映えるインテリア・エクステリアなどをアピールするとよいでしょう。
ワーケーションを成功させるための4つのポイント
ワーケーションを成功させるための4つのポイントを解説します。
・ポイント1.自己管理を徹底する
・ポイント2.セキュリティ体制を万全にする
・ポイント3.ワーケーションに適した機器やツールを活用する
・ポイント4.ワーケーション補助金を活用する
ワーケーションを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ポイント1. 自己管理を徹底する
ワーケーションを成功させるためには、自己管理を徹底することが重要です。
ワーケーションでは、働く時間と休暇を自己管理しなければならず、なかなか切り替えができないという問題があります。切り替えをうまく行うためには、日頃からスケジュールやタスクを手帳やアプリなどで可視化し、管理できるようにしておきましょう。
ワーケーションは、自己管理ができるようになってから実施するのがおすすめです。
ポイント2. セキュリティ体制を万全にする
ワーケーション先からのサイバー攻撃や情報漏洩などを避けるためには、万全なセキュリティ体制を整えることが求められます。
たとえば、次のような対策が挙げられます。
・セキュリティソフトをインストールする
・PC上のOSは最新のものにする
・公共のWi-Fiの利用を避ける
ほかにも、不審なメールやSMSは開かずに破棄する、怪しいサイトに注意するなど、一般的なセキュリティ対策も十分に行いましょう。
ポイント3. ワーケーションに適した機器やツールを活用する
ワーケーションは普段と違う環境で仕事をするため、適切なデジタル機器やツールの活用も重要なポイントです。
たとえば、次のようなものが挙げられます。
【機器】
・モバイルバッテリー
・USB充電器
・ケーブル
・モバイルディスプレイ
・小型マウス
【デジタルツール】
・進捗管理ツール
・勤怠管理ツール
・コミュニケーション(Web会議・チャット)ツール
ワーケーションに適したツールを活用することで、出社しなくても大きな支障がなく、仕事ができるようになります。
ポイント4. ワーケーション補助金を活用する
ワーケーションのコスト面が心配なときは、ワーケーション補助金制度の活用を検討してみましょう。ワーケーションを受け入れる自治体によっては、補助金を支給している場合があるため、うまく活用すれば少ない予算でもワーケーションを実現できます。
ワーケーションに関する補助金については、日本テレワーク協会で確認可能です。気になる方は、ぜひサイトにて確認してみてください。
日本テレワークに関する助成、補助|一般社団法人 日本テレワーク協会
ワーケーションの導入事例7選
ワーケーションの導入事例を7つ紹介します。
・事例1.平日の帰省で家族との時間をたっぷり取れた:スプラッシュトップ社員Nさん
・事例2.チームビルディングへの活用:株式会社ガイアックス
・事例3.ウェルビーイングへの活用:株式会社イトーキ
・事例4.VRやARなどテクノロジーの活用:マイクロソフト社
・事例5.有給休暇の取得率向上が目的のワーケーション:日本航空株式会社
・事例6.参加者のニーズに対応するワーケーション:北海道
・事例7.地域課題解決型ワーケーションの拡充:徳島県
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
事例1. 平日の帰省で家族との時間をたっぷり取れた:スプラッシュトップ社員Nさん
スプラッシュトップ社員Nさんは、インターネット環境とSplashtopさえあれば働ける利点を活かし「先輩の結婚式参列で地元に帰省するついでに実家からリモートワークをしてみたい!」と上司に相談しました。すると即OKが出て、約1週間の実家でのリモートワークがかないました。
今までは大型連休のみ実家に帰省していましたが、家族との休みが合わずに一緒に出かけることも少なかったというNさん。今回のように平日に帰省できたことで、家族と有意義に過ごせました。
大きなモニターを持ち運ばなくても、スマホでSplashtopアプリをダウンロードして会社のPCと接続したら、意外と快適に仕事がはかどったとのこと。このような身ひとつで実現可能なワーケーションなら、お盆やお正月などハイシーズンでの有給取得や、プライベートの予定の合間に働くことでムダに有給休暇を取得することを避けられるかもしれませんね。こちらの記事でも詳しくリポートしています。
参考:帰省ついでにワ―ケーション!? 実家で7日間リモートワークをしてきました!
リモートデスクトップアプリ『Splashtop business シリーズ』について詳しくはこちらからご覧ください。
事例2. チームビルディングへの活用:株式会社ガイアックス
株式会社ガイアックスは、ファミリーワーケーションプログラムとして、OTERA STAY(お寺ステイ)を実施、最大6泊7日の複数日程で約20名が参加しました。通常業務を実施しながら、業務時間外や週末に地元のアクティビティに参加しています。OTERA STAYでは、地元の人や他部署の家族との交流を通じ、部署横断の対面コミュニケーションを活性化させることに成功しました。協力した和歌山県勝浦市(那智勝浦観光機構)では、子ども・幼児を現地の保育園、公立小学校に受け入れ協力を行いました。
この取り組みで注目するべきコンテンツとして、お寺の活用があります。現在、全国で7万5千件あるお寺のうち、およそ1/3が空き寺であるとされており、今後の活用の可能性としても期待できるかもしれません。
参考:ガイアックス・那智勝浦観光機構が観光庁「ワーケーション推進事業」のモデル企業・地域に採択|PR TIMES
事例3. ウェルビーイングへの活用:株式会社イトーキ
株式会社イトーキは、ワーケーションを取り入れることで、仕事のパフォーマンスやウェルビーイングの向上が確認されたと発表しています。
同社がワーケーションの場所に選んだのは瀬戸内。「瀬戸内国際芸術祭2022」のパートナーに選定されたことをきっかけに、複数のグループがワーケーションを実施、その効果を測定しました。
検証の結果、仕事のパフォーマンスやウェルビーイングの改善効果は4週間持続することもわかりました。このことから、ワーケーションは個人の選択だけではなく、企業も戦略的に活用するものになっていく可能性が示唆されるでしょう。
参考:ワーケーション効果は4週間持続!イトーキが瀬戸内での実証実験結果を公開|PR TIMES
事例4. VRやARなどテクノロジーの活用:マイクロソフト社
VRやARなどのテクノロジーを活用すれば、ワーケーションで思い思いの場所にいながら、仮想空間での共同作業などが可能となり、業務の幅は格段に広がります。マイクロソフト社の「Microsoft Mesh」も、そうした世界観を目指すツールの一つです。
参考:Microsoft Mesh (プレビュー) の概要|マイクロソフト
事例5. 有給休暇の取得率向上が目的のワーケーション:日本航空株式会社
日本航空は、社員の有給休暇取得率向上を目指して2017年から休暇型のワーケーションを導入しました。休暇目的のワーケーションのため、社員が自ら移動費や宿泊費を負担します。
労働管理は以前から実施していたテレワーク規定を軸にして、業務時間より休暇時間を多くするように工夫しました。また、テレワークを希望する社員は休暇取得申請や勤怠報告を行うことが義務とされており、業務の進捗も共有されます。
導入当初は11人だったワーケーション利用者は、2020年には400人以上になりました。ワーケーションの普及とともにプロジェクトマネジメントスキルを重視し、新しい働き方を現在も模索しています。
事例6. 参加者のニーズに対応するワーケーション:北海道
北海道では、道内市町村や企業と連携して、豊かな自然や安全・安心でおいしい食といった北海道ならではの魅力を活かし、参加者のニーズに対応する「北海道型ワーケーション」の普及や展開を進めています。
北海道型ワーケーションは、都市部とは異なる環境での仕事を楽しみながら自然との共生を感じられ、リフレッシュ効果や新たなアイデアの発想を得られるのが特徴です。
また、地域資源を活かしたワーケーションは、地域振興や地域社会との連携を促進するほか、地域に新しい価値をもたらす効果も期待されています。
事例7. 地域課題解決型ワーケーションの拡充:徳島県
ワーケーションを自社業務のみに留めず、地域の課題解決にも取り組むスタイルが注目されています。
たとえば、徳島県の「アワーケーション」は、都市部の事業者を対象に社会貢献の機会を提供しています。このプログラムの目的は、地域の魅力を体感することや地元の人々との交流・マッチングを通じた地域課題の解決、そして集落の活性化です。
地元住民とともに「雑穀の販路拡大」や「地元産藍を使った食品開発の事業化」といったワークショップを実施するなど、地域の課題解決を推進し、企業のSDGs達成や人材育成、組織力の向上も目指しています。
地域にとっては、地域のファンを増やし、第二の故郷として1回で終わらない、継続的な関係性を構築することも狙いにあるようです。
Splashtop SOSはワーケーションに適したツール
ワーケーションの導入や定着には、企業がサポート体制を整えることも重要です。そのためのツールとして、ワンタイムのリモートサポートアプリ『Splashtop SOS』の活用がおすすめです。Splashtop SOSは、ワーケーションを利用している社員のデバイスに遠隔地からアクセスしてサポートします。
同じ社内にいれば、トラブルが発生したときでもすぐに駆けつけられますが、ワーケーション中はそうもいきません。しかし、Splashtop SOSを活用することで、ワーケーション中でも社内にいるときと同じような対応が可能です。遠隔地にいる社員にとって大きな安心につながるほか、管理者の負担も大幅に軽減され、業務効率が向上するでしょう。
ワーケーションの導入を検討している企業にとって、Splashtop SOSは大きな支えとなります。詳細については、お気軽にお問い合わせください。
ワーケーションを「特別なもの」から「当たり前のもの」に
ワーケーションは「特別なもの」と思われがちです。しかし、働き方の多様化やテレワークの加速、自治体の受け入れ体制の柔軟化により「当たり前のもの」になりつつあります。
ワーケーションの導入を検討している企業や、ワーケーションに興味がある方は、今回紹介したツールや制度を利用して、まずは試してみるとよいでしょう。
ワーケーションには、滞在先からでも会社のパソコンにアクセスしてリモートで業務ができる『Splashtop Business』をはじめとした『Splashtop』シリーズがおすすめです。あらゆるOSやデバイスに対応しているため、現在の環境をそのままワーケーションに活かせます。
また、Splashtopのサポート製品としてワーケーション中のトラブル解決に役立つのが、遠隔地から管理者が社員をサポートできる『Splashtop SOS』です。申し込み・アカウント発行・アプリダウンロードの3ステップで簡単に導入できます。
快適なワーケーションを実現したい方は、ぜひご相談ください。